大学受験に、塾は必要か?―「受験でやるべき2つのこと」から考える

「塾に行くことは、必要だと思いますか?」
そんな風な質問を高校生からされることがよくあります。

簡単に言えば、「”必要”ではないが、人による」というのが個人的な見解です。

塾に全く通わずに東大に合格することも可能です。
(私個人も塾に通わず1年間の勉強で東大に現役合格しました。)

一方で、万人が自力で相応の成績を上げられるかというと、そうでもないとも思っています。

今回は、このあたりのことについて考えていこうと思います。

そもそも、受験に必要なことは何か?

塾の有効性を議論する前に、「そもそも受験に必要なことは何か?」ということを考えてみましょう。

色んな考え方があるかと思いますが、個人的には、シンプルに以下の2つだと思っています。

①ギャップを把握する

②ギャップを埋める

究極、これらを自力で実現できるのであれば、(”受験の成功確率”という尺度だけを基準とした場合には)学校に行く必要すらないとも言えます。

それぞれについて、少し詳しく見ていきます。

①ギャップを把握する

「ギャップを把握する」イメージ

ギャップを把握する。
「現状」と「求められる水準」のギャップを把握するのが1つ目の必要なことになります。

当たり前といえば当たり前ですが、これが出来ていない人が意外と多い。

(1)求められる水準=合格に必要な学力(目標)
(2)現状=現在の自分の学力

これらと、そこから導き出される差分(ギャップ)を正確に、実感をもって把握することが重要です。

「正確に、実感をもって、把握する」とは?

大手予備校の模試を受けて、「合格ラインまで後X点」というのは割と正確なデータかと思いますが、数字は数字でしかないので、これではなかなか実感が湧かないかもしれません。

一方、例えば、クラスの友人がその模試で合格ライン程度の点数を取っていたとしたら、「あいつくらいできるようになればいいんだ」といった、よりイメージのしやすい実感を持つことができるでしょう。

このように、正確性と、実感、どちらも伴った形でギャップを把握するのがよいと考えられます。

なお、導き出したギャップは、そのまま捉えるのではなく、マージン(余白)をある程度加えた上で参考にすることが望ましいです。

②ギャップを埋める

「ギャップを埋める」イメージ

ギャップを埋める。
これまた当然ですが、これが2つ目です。

ただ、「がむしゃらに勉強する」ことと、「ギャップを埋めるべく勉強する」ことは結構違います。
埋めるべきギャップが前提にあることで、学習の方向性が定まるからです。

そして「ギャップを埋める」ということを考える際に重要となってくるのが、ギャップを埋める「速度(効率)」です。

ギャップを埋める「速度」はどう決まる?

ギャップを埋める「速度」は、以下の因数に分解できると考えられます。

速度=「質」×「時間」×「戦略」

従って、これらの因数を増大させることができれば、「速度」は上がると考えられます。

よく、「勉強の成果=質×量」だ!と言われますが、それに「戦略」の項を追加してみたものです。

後ろの因数から説明していきます。

ギャップを埋める「戦略」

戦略とは、ざっくり、「どう勉強を進めるか?」ということです。

例えば比喩として、陣取りゲームみたいなものを考えてみます。ゲームの最終目的は「全地域を制覇」することとしましょう。「全地域を制覇すること」が唯一のゴールとして明確だったとしても、「どんな順番で陣取りを進めるか?」という選択肢は多様であり、またその選び方によってゲーム全体の効率は大きく変わってくるはずです。

勉強も同様です。
埋めるべきギャップがはっきりしたとしても、どんな順番で学習をしていくかによって、全体の速度は大きく変わってきます。

「自分はどう勉強を進めていくのか?」
といった戦略が一つの因数になります。

例:物理と数学

物理では、三角関数や場合によっては微分積分など、数学的な知識が必要となってくることがあります。

順当に数学で基礎を整えてから物理をやるという方法もあれば、物理をちょっとやって数学をやる意義を見出してから数学にとりかかるというのも一つの方法かもしれません。

学力や性格などが異なれば、最適な戦略も人によって違ってくるでしょう。
「どう進んだら、長い目で見た時に最速となるか?」ということを、自分なりに考えることが重要だといえます。

ギャップを埋める「時間」

当たり前ですが、「時間」を費やさないとギャップは埋まりません。

当たり前すぎるので、きっと皆まずはここを増やそうとするはずです。
一方、時間ばかりを気にして、「質」と「戦略」をないがしろにしている人も少なくないように思います。

時間というリソースはとりわけ有限なので、その時間を有効活用するためにも、その他の二つの因数を改善していくという意識が非常に大切だと考えられます。

ギャップを埋める「質」

「質」という因数は非常に難解ですが、私なりの見解を述べようと思います(ここまでも全て私なりの見解ですが)。

質というのも更に因数分解でき、下記のような因数に更に分けられると考えられます。

  • モチベーション
  • コンディション
  • 能力(思考スピード、論理的思考、記憶力、etc.)
  • テクニック
  • 学習環境
  • 教材
  • 楽しさ

様々な要因が絡んでいることが見て取れます。

重要なことは、一般に思われているよりも「質」というのは自分で改善できるものだということです。
「学習の質」にまつわる研究は多数行われており、幾つもの知見が発表されています。

単語の心地良さに着目させる

<実験の例>
学生を集め、20個の単語が並んだ紙を配る。
学生を2つのグループに分け、片方のグループにはそれぞれの単語の「g」と「e」の数を数えさせた。もう片方のグループには、それぞれの単語に感じる「心地良さ」に着目してもらった。

⇒「心地良さ」に着目したグループは、そうでないグループの7倍もの単語を覚えていた

このように少し意識を変えるだけで、学習の「質」が大きく変わる可能性があるのです。

その他にも、睡眠や運動といったコンディショニング、スマホをどこに置くかも含めた学習環境によって、「質」は変わってきます。

(「質」については、結構手元に情報があるので、需要があればまた詳細な情報を投稿しようと思います。)

受験に必要な2つのこと(おさらい)

少し細々とした話をしてしまいましたが、ごくシンプルに考えれば、受験に必要なことは二つだけです。

①ギャップを把握する (正確に、実感をもって)

②ギャップを埋める (質×時間×戦略)

私的には、「①を適切に行い、②を最大速度で実行する」ことが受験において目指すべき一つの境地であると考えています。

これが出来ている人は、「取り組み」という側面からは全く問題ないでしょう。それによって、あなたの「合格可能性」は最大化されているはずです(受かるとは言っていません)。

一方、そうでなければ、まだまだ改善の余地があるということになります。

「ギャップを把握&埋める」イメージ

結局、塾は必要か?

やっと本題に戻ってきましたが、塾の必要性についても、この2つの点から考えます。

これらが現状の環境で適切に実行できるかどうかが、まず判断のポイントとなります。

①ギャップを把握する (正確に、実感をもって)

②ギャップを埋める (質×時間×戦略)

①と②を既に十分なクオリティで実行できている人や、自分の力と学校のサポートなどによって着実にそのクオリティを改善していける人ならば、塾などの外部サポートは全く必要ないと言えるでしょう。
(これがいわゆる「自分で勉強できる子」という人種なのかもしれません。)

一方、現状の環境でこれらを十分なクオリティで実行できないと思われる場合には、塾などの選択肢を真剣に検討してみてもよいと考えられます。

本当に、塾がベストな選択なのか?

しかし気を付けなければいけないのが、①と②について、塾がそれらを効果的に改善してくれるとは限らないということです。

大事なのは、「自分に足りないもの」と「塾が提供するもの」の相性です。

例えば、「戦略」を改善したいのに、ひたすら一斉授業を実施するような塾に行くのは適切な解ではないでしょうし、「時間」というリソースが塾に奪われることを考えれば、行かない方がいい場合すらあるでしょう。
また、勉強の「質」に課題があると思っていたとしても、一般の塾でそれに対する適切な助言をしてくれるところは殆どないと言ってもいいでしょう。

「自分に足りないもの」と「塾が提供するもの」。
これらが上手い具合に合致した場合に、初めて塾という選択肢が有効になると言えます。

結論:「必要」ではないが、人にとっては有効

長々と論を展開して気ましたが、結局こういうことだと思っています。

ただ一つ主張したいのは、「ギャップを認識し、埋める」という一連の流れは、おそらく今後の人生で何度も経験し得ることであり、それを試行錯誤しながら実行していく力は、受験を越えて人生においても非常に重要であると考えられるということです。
塾に通うにしても通わないにしても、誰かや何かに引っ張ってもらうことを期待するのではなく、自分でしっかり情報を集め、考え、工夫して、主体的に「ギャップを認識し、埋めていく」。そんな姿勢と能力を育める環境を選ぶことが出来たらいいのではと、私的には思っています。

受験という区切りに向けての皆さんの取り組みが、ただのしんどい時間で終わるのではなく、楽しみながらも成長できるような取り組みになることを願っています。

投稿者プロフィール

尾張由輝也
尾張由輝也
東京大学卒。
高校入学後まもなく2年間ほど軽度の不登校に。受験の1年前より受験勉強を開始し、塾などに通うことなく東京大学理科Ⅰ類に現役合格する。
現在は自生塾代表、国際高等専門学校課外活動指導員などを兼務しながら、学習改善、自然教育、キャリア教育といった教育活動に取り組んでいる。